●書評:Wahyu Prasetyawan, Networked -- Business and Politics in Decentralizing Indonesia, 1998-2004, Kyoto University Press, 2018.
インドネシアのスハルト政権崩壊(1998年)後に民主化と地方分権化が同時に進み、それまでの権威主義体制下で極度に中央集権化された政治権力とその下での天然資源の利権配分構造が、地方を起点に大きく変化していく状況を、地方エリートの「政治的ネットワーク」のあり方と効果に注目して実証的に解明する。3つのケース(東カリマンタンの石炭鉱山、西スマトラのセメント工場、リアウの油田)を事例として取り上げ、詳細な検証に基づいてそれぞれの成否や利益の地元還元率の違いを指摘し、さらにそれらの違いを生み出す政治的ネットワークの量や質を評価している。体制転換前後のインドネシアの政治経済の変化を理解するのに有益な研究書である。 (金子芳樹)